主演の福山 潤さん、収録終了後のロングインタビュー
――「城物語」という作品に参加しての感想をお願いします。
福山潤さん(以下「福山」):朗読で城物語というタイトルを聞いて、台本をいただいて初めて触れて、城にまつわる松平容保の話かと思っていたんですが、途中で城と会話を始めたので「なんてこった!」と、多少驚いたんですけど(笑)。
朗読やドラマ CD などで戊辰戦争は描かれる時は、新選組が取り上げられることが多く、その中で京都守護職の会津藩主・松平容保公はと出てくるので、名前だけは知っていました。
残念ながら歴史にあまり造詣がないので名前以外はどんな人なのかも知らなかったんですが、今回「なるほどね」と思いながら色々と勉強になりましたね。
――好きな城はありますか。
福山:僕は大阪府高槻市出身なのですが、高槻城を大阪府高槻市は高度成長期に壊して市民会館を建ててしまった町なんですけど……。
高山右近という結構有名なキリシタン大名の武将がいた城を、残っていたにも関わらず壊してしまって(笑)。そこに住んでいたので……。
実家が広島県福山市なんですが、福山市は全国で一番新幹線の駅のホームから城が近くて、ホームからきれいに見えるという点で、やっぱり福山城が一番身近にありましたね。
――松平容保をどういう人だととらえていますか?
福山:台本を読んでいくと、京都守護職になったのも、藩主になったのも、敵前逃亡することになったのも、自分の意思ではなかったということもあったりして、30 歳そこそこの若さで藩主になって重責や周りとの兼ね合いなどもあって、なかなか自分の意志を通せなかった人なのかというイメージができてしまいました。
でも、最期まで戦い抜いたのは、土地や領民を愛していたからなんだな、幕府に忠誠をつくそうとしていたんだな、つまりは清廉な人だったんだなあ、と思いましたね。
――演じる上で気をつけたことは?
福山:演じるというか朗読全体として、松平容保は 30 台半ばの武将で藩主ということなので、自分の普段のような軽々しさで演じるわけにもいかず(笑)、そして終盤には 48 歳、50 歳半ばという年齢にもなるので、そういう部分でコントラストが付くように演じました。
また、城以外の家臣やガヤも僕が演じたので、そういうところでもコントラストが付くように方法論から入った部分もあります。全体として朗読なので落ち着いた感じでと思ってやらせていただきました。
――森川智之さんが城役ということですが、どう思われましたか?
福山:明らかに容保より偉いですよね(笑)。
だから、なるべく気を付けなくてはいけないとすれば、城に取り憑かれて使役されている武将にならないといいなと思って演じていました。
台本を読んだ時、朗読なので全部僕が演じると思っていたら、会津若松城役に「森川智之」って書いてあって驚きました(笑)。そこもまたひとつの面白味かなと。
実際に森川さんの演技を聞いてみないと、どういう風に聞こえるかが分からないですけどね(笑)。
――福山さんが城を演じるとしたらどの城でしょうか?
福山福山:僕が城ですかぁ?それじゃあ、高槻城が壊されるときの無念を……(笑)。
現代に飛んで行ってですけど……悲しい話にしかならないですよね(笑)。
――もしも福山さんが城を建てるとしたらどのような城ですか?
福山:うわ~、また城に造詣の浅い僕に聞きますねぇ。
――ちなみに石田さん(前作「城物語 石田三成と忍城」を朗読)は、日本のお城は嫌だと言っていました。
福山:あ~、本当かなぁ~。キャッスルかシャトーにするってことですね。
でも、僕は和風のお城好きですね。まあでも、城というよりは建てるとしたらからくり屋敷みたいな要塞にしたいですね。来る人が来るのはいいけど帰れないみたいな。
余談ですが、声優を始めたばかりの頃に、地図を持ってスタジオに行くんですが入り口がぜんぜん見つからないんですよ。明らかにここなんですけど 3階って書いてあるんですけど…… 2 階までしか入り口がなくて。1 階がレストランなんですが、上がっていくとパントリーで……。
困って遅刻しかけたときに、裏口にインターホンが見つかって。押すと「今開けます」って言われて。今ここにある鉄の扉の錠戸が開くのかなと思っていたら、壁が「ゴゴゴゴゴッ」といってスライドして、奥にらせん階段が伸びてて「マジか!?」って。
余談ですけどね……(笑)。行ったらディレクターの人が「へへへ、忍者屋敷みたいでしょ」って、地図に書いとけって……(笑)。
――今回の話のテーマはなんでしょうか?
福山:やはりですね、城も含めて日本人には「土地神」とか「八百万(やおよろず)」とか、愛着のあるものに魂が宿るという考えが僕らの DNA にあると思うんです。それが領地や領民を見守ってきた城が、より強い意志を持っているんだとしたら、そんな城と意志を通じさせることが出来るのであれば、それはロマンだと思いますね。
――戦の中での領民の生と死をどう捉えますか?
福山:自分たちの美学や意志を貫き通すことによって、領民すべてを犠牲にするのが是とするのか非とするのかは非常に重要な問題だと思います。やはり、武士という人たち、また藩主が自分というものを個としてとらえたら、トップとしてやりたいことと、しかしそうすること領民たちにで道連れが出てしまう。
その点を城が諭し、見せるということなど、ことここに到っては奇跡として起っても、それは状況としては不思議ではないことと思いますよ。
――福山さんにマイクが語りかけてきたらどうですか?
福山:マイクが語りかけてきたら・・・鬱陶しいんでやめて欲しいですね(笑)。セリフを読みながら大事なシーンで語りかけてきたら「うっ、うっ、おぉ」って感じになりますからね。トークバックで「どうしました?」って言われるだけですからね(笑)
――最後に楽しみにしているファンに、作品について一言お願いします。
福山:そうですね、歴史ロマン朗読 CD 「城物語 松平容保と会津若松城」。結構ですね、僕自身は時代、歴史に造形が深くないとは言いましたが、時代劇を見るのは大好きでして、昔、年末時代劇スペシャルとかで「五稜郭」とか「白虎隊」とか、富みに見て涙を流していた口ではあったので、戊辰戦争の時代の「白虎隊」も出てきて、彼らが会津の城が燃えていると思って自害するところを容保に映像で見せたりとか、知ってるものが出てきたりとかして。
歴史を知っている人も知らない人も・・・知ってるとよりなんだと思うんですけど、こういう切り口の朗読が、またひとつのジャンルとしてできてくると面白いなぁと思いますね。
まあ、擬人化ではないですけど、この数年、擬人化がすごく流行ったじゃないですか。擬人じゃなくてそのまんま、ていう……(笑)。でんとした感じの動かない価値観でいいと思います。ぜひとも楽しみにしていて下さい。
――ありがとうございました。
福山:どうもありがとうございました。