僕は、彼女を失った。1 年前、交通事故で最愛の彼女を失った僕は、生きる希望を失くしていた。
彼女のいない人生なんか考えられない……そんな思いを抱えたまま、ある時、家路を急いでいると、ふと見なれない看板を目にする。
看板には「ふしぎ工房」と書いてある。
僕は看板に誘われるように、ふらりとその工房に足を踏み入れた──
シャイとか草食系とか……いや、僕の属性はそんな可愛い言葉でカテゴライズされやしない。
僕はガチのあがり症で、ついでに母親ぐらいとしか顔も合わせられない女性恐怖症だ。そのせいで、僕の人生すべからく灰色に塗り潰されてきた。
でも今日こそ、僕は生まれ変われるかもしれない。
「ふしぎ工房」の老人の指示どおりならば、この先の喫茶店に「女性のエキスパート」が僕を待っている。彼女に会いさえすれば──
大手企業のエリート新人、そんな自負を持つ「僕」。業績を上げるための手段は選ばない、どんな困難も怖れない。出世して社会的地位を築き上げる、それだけが「僕」の望みだ。
しかし、そんな「僕」の野望は、「彼女」の縁談と「同僚」の悪計によって、足許から覆されてゆく。自棄になり夜の街を徘徊する「僕」がふと目に留めたのは、「ふしぎ工房」と書かれた古くさい看板だった──
僕は、僕と一緒に死んでくれる人をずっと探していた。だけどいつまで経っても現れやしない。
やはり独りで死ぬしかないのか──
街をさまよい歩くうちに、ふと、見知らぬ路地に入りこんだ自分に気がついた。
見降ろすと足元に小さな黒猫がまとわりついている。
誘われるように僕は「ふしぎ工房」に迷いこんだ。
俺の野望を聞いてくれ。それはな、世界一の大金持ちになることだ。
そのためなら何だってやってやる…が、非合法なやり方はしねえ。一応、常識人だからな。
借金取りに追われる俺は、とある情報屋から、どんな願いでも叶えてくれる「ふしぎ工房」の話を仕入れた。そしてまんまとそこへもぐりこみ、叱咤する老人を尻目に「大金持ちにしてくれ」と注文書に書きつけた。
街で適当に入ったパチンコ屋。溢れかえる騒音とともに俺を待ち受けていた運命は…
街並みが冬景色へと変わっていく。もうすぐクリスマスだ。
今年こそ素敵なイヴを過ごせますように……
仕事は順調、後輩からも頼りにされるリーダー格の僕だが、時折ふと孤独感が募る。
ある夜、帰宅途中の僕の目に見慣れない看板が飛び込んできた。ふしぎ工房……戸板に筆で殴り書いたような字だ。好奇心から足を踏み入れると、老人がひとり店番をしている怪しげな空間だった。しかし、「ここでは幸せを売っている」そんな言葉に思わず「淋しいんです」と本音が口をついて出た。
促されるまま、僕は注文した。「支えてくれる彼女がほしい」と──