いつもの見慣れた風景の中に、ある日突然現れる怪しい店、ふしぎ工房──
訪れた者を迎えるのは、かくしゃくたる老人、時にはあどけない少女。
そこでは、“注文”さえ出せば、何でも願いが叶うという。
日常の中で悩み苦しむ人々が求めるものとは?
<物語>
日常で起こる些細で不可思議な出来事──それが人間の思考、行動に影響を与えてゆく過程と結末を、「ふしぎ工房」を媒介にして主人公の視点で追っていく。
生活していくことの疲労感、子供の頃に見た光景への回顧、揺れ動く将来に対する希望と展望、死への恐怖、家族との軋轢、抗争募る孤独と不安、そして恋愛感情……様々な思いを抱えて生きている人間が、ある日、偶然、街角で「ふしぎ工房」という看板の店に出くわす。いつもの通い慣れた道に、突然出現したかに見える「ふしぎ工房」。こんな工房なんてあったっけ……?
主人公はつい誘われるように「ふしぎ工房」へと足を踏み入れ、ここから物語は静かにゆっくりと展開していく。