約1年ぶりに新作発売となるオリジナル朗読 CD シリーズ「ふしぎ工房症候群」──今回の物語について、その魅力や収録の感想を、語り手の佐藤聡美さんと原作者の竹内葵先生のお二人に聞いてみました。

── このほろ苦さが、逆に幸せに繋がるんじゃないかなって(佐藤) ──
── 「ふしぎ工房症候群」の新たな可能性と考えてもらえれば嬉しいです(竹内) ──

★ 佐藤聡美さんへ 収録を終えてのインタビュー ★
佐藤聡美さん
──収録お疲れ様でした。
お疲れ様でした。ありがとうございました。

──本日の収録の感想を聞かせてください。
私自身、朗読というものがすごく好きで。高校生の頃は放送部に入って、ずっと部活で朗読をやっていました。
今回まさかお仕事で、朗読をっていうお話がいただけると思っていなかったので、前日から張り切って台本をチェックさせていただきました。それに、当日も現場で、色々とディスカッションさせていただいたりもして、ものすごく楽しく朗読をすることが出来ました。
久しぶりに、一つのお話を夢中になって、声に出して読んだなぁと思います。

──この物語を朗読するにあたって、事前に原作者さんとの打ち合わせがあったそうですが、そこではどういうお話や提案をされましたか?
原作者の竹内さんと最初にお話をさせていただいた時、「どういうお話を朗読したいですか?」と訊いていただいたので、一つのお話の中で何個かキャラクターを演じたい、とお願いしました。お話の中で色んなものを演じてみたり、色んなことに挑戦したりして、主人公の「私」っていう女の子自身が成長出来るようなストーリーだと、すごく嬉しいというお話もさせていただきました。
あと、女の子って妄想とか空想とかが大好きなんですけど(笑)、例えば妄想の中ではヒーローだけど実は苛められっ子の思春期の女の子をやってみたい、とか……そんなふうに、こんな感じがいいですっていうのを思いついただけ口にしていったのを、綺麗にまとめていただいたのが、今回のお話になりました。

──パーソナルな質問もありましたか?
そうですね(笑)。家族構成とかを聞かれました。

猫イラスト ──それは登場人物に活かされていると感じましたか?
いいえ、特には。でも「猫を飼いたかったけど結局飼えなかったんです」なんてお話をしたら、クロっていう猫が実際に登場して、ちょっとテンションがあがりました(笑)

──今回のお話の聞きどころは?
思春期の女の子が、自分の妄想の中で好き勝手暴れ回る姿です。
アイドルになりきったり、女優になりきったり、お嬢様になりきったりと、妄想のそれぞれの世界の中でものすごく輝いている主人公の──最終的には「私には合わない」って言って、どこか別のトコロにいっちゃったりもするんですけど──、色んなことをやってみるっていう姿勢が面白いかなと。
それから、例えばこのシーンは女優さんだけど、監督に怒鳴られてるしなヘタクソにやった方がいいのかな、とか、ギャルはこんな感じで喋るかな、とか考えながら、色んな登場人物を全部一人で演じたので、そこも聞きどころかな、と思います。

──最後はハッピーエンドなのかな? と、ちょっと難しい終わり方でしたが、この主人公は幸せになったと思いますか?
私はむしろハッピーエンドで終わる話ではないことを求めていたので、すごく素敵だなと思いました。
やっぱり、何でもかんでも人生そう上手くいくわけじゃなくって。自分の幸せや、自分が何をして生きたいのかを見つけて頑張りなさいっていうことを教えてもらった、良い機会だったんじゃないかなぁって。
でなかったらこの主人公はきっと、ずっと空想の中に閉じ籠もったまま、暗い曇り空のような人生を送ると思います。
そう考えたら彼女はすごく幸せだったしラッキーだった、って。このお話の中で色んなことを経験したことで彼女の可能性が広がった、それがやっぱり、彼女にとっての幸せなのかなと思います。
だから、このほろ苦さが、逆に幸せに繋がるんじゃないかなって。

──もし佐藤さんご自身が主人公の立場で、猫に何か願いを叶えてもらえるとしたら?
どうしようかなー? そうですね、願いを叶えて貰うとしたら……すごくベタなんですけど、男の子になって、男の子一日体験してみたいです。
あと、声優さんにならなかったらペットショップで働きたいなと思っているくらい動物が大好きなので、ペットショップの店員さんになってみたいな。
今はもうこうやって声優としてお仕事させてもらってますけど、もし声優じゃなかったらって想像した時に出てくるあんな職業、こんな職業に、挑戦して、挫折して、やっぱり声優で頑張ろう!っていうふうに(笑)……この子みたいになるんだろうなって思います。

──今回の作品の中では、突然その場面場面に飛んじゃいますよね。
台本 そうなんです。いきなりコンサートホールとか、これから映画の撮影とか、色んなシーンに飛んで。
でも、そこでも臨機応変に対応してる彼女はすごいなって(笑)思います。

──佐藤さんも自信ありますか?
いやぁ……、そうなったら慌てますよね?「はっ、どうしようどう……『(アイドル風)みんな今日はありがと~!』」みたいな(笑)すごくワタワタして、多分、とりあえずやってしまうんだろうって、何となく目に見えるようなんですけど。
でも、例えばいきなりペットの毛を刈ってる途中に飛んだらどうしましょう? 丸坊主とかにしちゃって怒られて挫折するのかな……、なんて、私の妄想が広がります。

──では最後に、この作品を聞かれる皆様にメッセージをお願いします。
このお話は、皆さんが必ず経験しているであろう、妄想や空想をテーマにした作品になっています。
主人公の「私」は、やってみたいことへの沢山の挑戦を、妄想の世界の中で具現していきます。「あぁ、こういう想像したことあるな」なんて皆さんにも思っていただけるようなエピソードがちりばめられていたり、最後は色々と考えさせられる展開になっていたりします。
そして私、佐藤聡美が、出てくるキャラクターを全部演じています。念願の朗読の仕事ということで、気合いと気持ちを十分にこめまくって、今回朗読させていただきました。
是非ぜひ、この「ふしぎ工房症候群」の世界にとっぷり浸っていただければ嬉しいなと思います。
よろしくお願いします!

──ありがとうございました!

★ 竹内葵(原作者)からのコメント ★

──今回の作品では、思春期の女の子の空想がメインに語られていました。
世相や難病などをテーマにしたこれまでの作品からは大きな転向のように感じられますが、今回の作品が生まれたプロセスについてお聞かせください。

今回、物語を作る上で佐藤さんと打ち合わせさせてもらったのですが、彼女から色々なアイデアが出て、それをまとめたら自然にこういう作品になりました。
大きな転向というか、「ふしぎ工房症候群」の新たな可能性と考えてもらえれば嬉しいです。

──今回の朗読は、現在、若手実力派声優として活躍中の佐藤聡美さんですが、打ち合わせや収録を通じて、どんな印象を持たれましたか?
とにかく朗読に対して熱心で、強いこだわりを感じました。収録時も自分で納得できるまで何回もやり直したりして感心するほどでした。
ネットで見たのですが、高校生の時に全国高校放送コンテストの県大会朗読部門で優勝しているんですね。なるほどと思いました。

──「ふしぎ工房で強引に注文をする客」としては、第1シリーズ「カネかえせ!」(語り:谷山紀章)以来の二人目ですね。前作は主人公の「俺」が手痛いしっぺ返しを食う異色作でしたが、思春期の女の子に対して「ふしぎ工房」は甘くないでしょうか?
猫 甘くないですね(笑)。今回の物語は、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、非常に微妙な終わり方をしています。
もしかしたら、「懲りない女の子」のシュールなお話なのかもしれません。

──約1年ぶりの「ふしぎ工房」シリーズ最新作ということで、大勢の方が期待を寄せていらっしゃることと思います。
この作品を聞かれる皆様へのメッセージをお願いします。

佐藤さんの演技の幅とテンポ感によって、まさに「夢見る少女」が動き出したと言えるでしょう。
絶対に楽しめる作品になっていますので、ご期待下さい。

──ありがとうございました!